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新潟地方裁判所三条支部 昭和35年(む)12号 判決 1960年11月26日

被疑人 村上忠生 外二名

決  定

(被疑者氏名略)

右被疑者等に対する公職選挙法違反被疑事件につき新潟地方検察庁三条支部検察官検事秋山真三がなした刑事訴訟法第三十九条第三項但書の処分に対し弁護人坂上富男から準抗告の申立があつたので次のとおり決定する。

主文

昭和三十五年十一月二十六日新潟地方検察庁三条支部検察官検事秋山真三がなした「弁護人坂上富男と被疑者村上忠生、同鈴木正治、同坂井寅市との接見等の日時及び時間を村上忠生について昭和三十五年十二月二日午後七時から三十分、鈴木正治について同日午後七時三十分から三十分、坂井寅市について同月三日午後七時から三十分と各指定する」旨の処分を取消す。

弁護人のその余の申立を棄却する。

理由

検事秋山真三の昭和三十五年十一月二十六日付意見書及び送付を受けた被疑事件記録を総合すると、右検事は主文の掲記のとおり接見等日時、時間の指定をなしたこと、被疑者村上忠生同鈴木正治は同年十一月二十五日に同坂井寅市は同月二十六日に各勾留されたことが認められ、そして右指定日時に至るまでは弁護人との接見を事実上禁止したものであることが認められる。

よつて右検事の処分が刑事訴訟法第三十九条第三項但書に違反し被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するものであるかどうかについて考えてみるに刑事訴訟法第三十九条第一項によれば弁護人は被疑者との接見の権利を基本的に有するものであり、同法第八十一条によればその接見を禁止することが許されないものである。ところが前示検察官の処分は十日間の被疑者勾留期間中の大半にわたり事実上接見を禁止し、単にその末期において一回三十分だけの接見を許すに過ぎないのであるから、このような処分は刑事訴訟法第三十九条第三項但書の規定に違反する不当な処分と解さなければならない。よつて右検事の処分取消を求める趣旨の弁護人の申立は理由がある。

次に弁護人は毎日夕刻十分程度宛接見されるよう指定することを求めているが、接見等日時、時間の指定は捜査官において捜査の必要に応じ、且つ被疑者の防禦の準備をする権利を不当に制限しない限度において適宜指定すべきものである。

ただ捜査官のなしたその日時、時間の指定について、これを変更するを相当とする具体的事由が存在するときは裁判所においてその変更を命ずることができるけれども然らざる場合はこれに関し裁判所は干渉することができないものと解するを相当とする、ところで本件においては検事の指定した日時、時間を変更すべき事由の存在を認めることができない。

以上の理由により本件準抗告の申立の内右検事の処分の取消を求める部分は理由があるがその余の部分は失当であるからこれを棄却すべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 荒井重与)

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